再びの実家

4/6
前へ
/219ページ
次へ
「毎日毎日新しい衣を仕立てているし、誰も使わない宮を毎日みっちり掃除してる。気がついてました? 埃もないから、掃くふりをしているだけの人もいるんですよ」  たしかに、いつ妃を迎えるのかわからないのだから、花の名がついている宮を手入れする必要はあるだろう。だが、毎日毎日使ってもいない建物を掃いて回る理由が、翠珠にはわからない。 「使ってない宮の掃除は、三日に一度に減らせば、使用人の数も減りますよね。そうなったら、お給金や、支給品も節約できるし――って、こういう考え方は後宮じゃしませんよね。言い過ぎました」  うっかり、生家の基準で物事を語ってしまった。  こんなの、皇帝には何の役にも立たない情報だ。ひょっとして、後宮で働かせることによって、仕事を供給しているのかもしれないし。 「いや、言われれみればそうかもしれないな。あまりにも人数が多いとは俺も思っていたんだ」  翠珠の考えを、意外にも彼は肯定してくれた。そうなってくると、翠珠の方もなんだか嬉しくなってくる。 「……でも、仕事がなくなったら困る人もいますもんね」 「必要なところに回せる分は回した方がいいんだろうな」  春永の実家である酒蔵に顔を出すと、そこではちょうど春永の父である主が困った顔をしていた。 「どうしたんですか?」
/219ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1715人が本棚に入れています
本棚に追加