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翠珠のしていることは、悪あがきではないだろうか。
母が用意してくれた茶を飲みながら、そう思う。
だからと言って、今すぐ受け入れられるというわけでもないけれど。
父との会談を終え、外に出ると文浩は大きく伸びをした。
「李家と繋がりを持つことができたのは幸いだったな。おかげで、率直な話を聞くことができた――元璋はなかなか面白いな」
「そうですか? 父はとっても欲張りなだけだと思ってましたけど」
「欲深い方かそうではないかと言ったら、欲深い方だろうな。だが、姑息な手を使って、他人を蹴落とそうという気はないと思ったぞ」
李家は、急激に勢力を伸ばした。だが、父はそこまであくどいことはしていないというのは翠珠も予想できた。
翠珠を後宮に入れるのにごり押しはしたけれど、他の誰かに害を与えて、その座を奪い取ったわけではない。惜しみなく金銭をばらまくことでどうにかしたはずだ。
帰り道を再び彼と並んで歩く。前にも同じようなことはあったけれど、あの時とはすっかり立場が変わってしまった。
(……考えても、しかたないんだろうな)
隣にいるのが、董文浩ではなく、海志縁だったらなんて、考えたところで、何も変わらない。
まだ、彼を支えていきたいとまで、翠珠の気持ちが固まったわけでもない。
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