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皇帝と知っての襲撃?
「……翠珠、無事か」
「私は……大丈夫です。陛……志縁様は?」
「俺も怪我はない――しかたない、警護を頼んで戻るか」
騒ぎに気付いたらしく、都の警備隊が駆けつけてくる。文浩は海志縁であると名乗り、
「皇太后の依頼で、買い物に出た宮女の護衛をしていたところ襲われた」と告げた。
「街中で盗賊が出るとは……申し訳ございません」
「宮女が怯えているので、後宮まで護衛を頼みたい。それと――そいつらは皇宮で尋問する。一人自害されてしまったから、残りは厳重に注意してくれ」
「かしこまりました」
警備兵達はうやうやしく文浩に頭を下げた。海志縁というのも、なかなかの有名人なのだ――実在しない人物だけれど。
「先に戻っていてくれ。あとで、薔薇宮の方に行く」
「……わかりました」
素早くささやかれたのに、翠珠はうなずいた。
相手はこちらが何者なのかわかって襲撃してきたのだと思う。意識が残っていた一人が、かなわないと知るなり自害したのは、命令した人物の名を口にするのを避けたため。
翠珠のために馬車が用意され、そのまま薔薇宮へと送り届けられることとなった。
(……あれ?)
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