皇帝と知っての襲撃?

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 中に入ったけれど、薔薇宮はしんと静まりかえっていた。留守を任せた春永がいない。  どこかに出かけていて、まだ戻ってこないのだろうか。  先ほどは腰が抜けて立てなくなったかと思ったけれど、馬車で休ませてもらった間にだいぶ回復したようだ。 (……衣が汚れてる)  身に付けて出た衣は、先ほどの襲撃の際に汚れてしまった。  幸い着替えは一人でできるから、手持ちの衣装の中から地味目のものを選んで身なりを改めた。 「……それにしても、陛下があんなに強いと思ってなかった」  たしかにあれなら護衛としても一流なのだろう。男達がどれほどの剣の腕の持ち主なのか、翠珠にはよくわからない。それでも彼が強いだろうことはよく理解できた。 (……ちゃんと、私のことを守ってくださった)  胸に手を当ててみる。そこは規則正しい鼓動を刻んでいて、  間違いなく、翠珠は負担になっていたはずだ。誰かを守りながら戦うのが大変だということは、戦う術は持ち合わせていなくてもわかる。  それでも、翠珠は怪我一つなく戻ってくることができた。
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