1715人が本棚に入れています
本棚に追加
春永は、以前と変わらず接してくれる。この場所に来てから、それがどれほど安堵させてくれたことか。
(私も、このまま変わらないでいたい……)
もし、妃としての身分をかさに来て、春永に威張り散らすようになったら――それはきっと、翠珠の中の前世が消えてしまった時だ。
もちろん、前世は前世。必要以上に前世にとらわれる必要もないと思っている。ただ、翠珠が前世の自分を失いたくない――それだけの話ではあるのだ。
お茶をいれて戻って来た春永は、顔色が悪かった。
「ねえ、襲撃されたって聞いたんだけど……大丈夫? 怪我はしていない?」
「どこで聞いてきたの、そんなこと」
「護衛が増やされたのよ。薔薇宮の周囲を厳重に警戒してるって……厨房の人達が言ってた」
厨房に湯をもらいに行ったら、ちょうどそんな話になっていたそうだ。翠珠は普通にしていたから、単に帰宅予定が早まっただけだと思っていたらしい。
「たしかに襲撃はされたけれど……あとは、陛下にお任せしたから、私はよく知らないの」
「……そう」
最初のコメントを投稿しよう!