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(なんで、よりによって『百花真愛』の世界だとしても崔国なのよ……!)
上掛け布団を引き寄せ、寝台の上で丸めた身体をぶるりと震わせる。
――もし、ここが本当にゲームの世界なのだとしたら。
この国は近いうちに滅亡する。その時、翠珠も国と共に命を落とすことになるのだろう。
だって、その記憶もちゃんとある。
李翠珠――薔薇宮の主。皇帝の妃のうちの一人。
(――冗談じゃない!)
そのことに思い当ったとたん、翠珠は上掛け布団を放り投げ、寝台の上に勢いよく立ち上がった。
「――私は、まだ死にたくない!」
翠珠の声は部屋中に響き渡る。
「……はあ? あなた何言ってるの?」
翠珠の大声に起きたらしい同室の少女達が、いっせいにこちらに向けて非難のまなざしを向ける。まだ、起床の時間まで少しあるというのに、翠珠の大声で起こされてしまったようだ。
「……ごめんなさい」
「――寝ぼけてるんでしょ。もう一度寝たら?」
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