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(馬鹿にしてる、馬鹿にしてる、馬鹿にしてる――!)
いざ、自分が妃の立場に置かれてみると皇帝のやり方はあまりにもひどいように思えてくる。
ひとつ、救いがあるとすれば。
(まだ、ゲーム本編は始まっていない)
そう、まだゲームは始まっていない。
おまけに翠珠はまだ妃となっておらず、牡丹宮で働く宮女でしかない。
前世の知識からすれば、あと二年ほどで国が滅亡するはずだ。どういう事情で国が滅亡した時薔薇宮の主となっていたのかはわからないが、上手に立ち回れば妃に選ばれることは免れるはずだ。
そう、今ならまだ逃げることができる。後宮を出て、どこか遠い所へ行くこともできる。
前世の記憶が戻っただけではなく、今まで李翠珠として生きてきた十五年の記憶もしっかりある。
(絶対に、逃げ出してやるんだから――!)
また、大声を出して皆に迷惑をかけてはいけない。上掛け布団の中で、翠珠はぎゅっと手を握りしめた。
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