死亡フラグを回避せよ

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死亡フラグを回避せよ

 ――百花真愛(ひゃっかしんあい)。 それは、前世の翠珠が、病室のベッドの上で繰り返しプレイしたゲームだった。 ゲームはとある大陸にある五つの国のうちのどこを選ぶかで攻略対象者が変わってくる。そして、ゲームが開始した時点でこの国は滅びていた。 元崔国を選んだ段階で、攻略対象者となるのが皇帝の――ゲーム開始時には元皇帝である――の(とう)文浩(ぶんこう)だ。 ゲームのヒロインと愛し合うようになった彼は、無事に国を取り戻す。幾多のライバルキャラを蹴散らしたヒロインは、復興した国の皇后となる。それでハッピーエンドなわけだ。 他の国を選んだ時も、後宮内の争いを勝ち抜かなければならなかったり、海賊と一緒に生活したりとなかなか波乱万丈だった記憶がある。 (……思い返せば思い出すほど腹が立ってくるんですけど……?)  なんて考えていることは表情には出さず、翠珠はひたすらに針を動かす。  現在翠珠は、牡丹宮で皇太后の針子として仕えている。  崔国の後宮には、花の名を与えられた宮が九つ存在する。本来ならば、その宮に妃が存在していなければならないが、現在使われているのは皇太后が居住している牡丹宮だけ。 それ以外の宮――蓮花宮、桃花宮、菊花宮、芙蓉宮、芍薬宮、梅花宮、桔梗宮、薔薇宮――は、主がいなくて無人のままだ。
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