1718人が本棚に入れています
本棚に追加
(それにしても、どうやって”私”は皇帝の妃に潜り込んだのかな……?)
ゲームの中では、翠珠の他にも三人の妃がいたとか言っていたような覚えがあるが、今の翠珠にとって皇帝は雲の上の人。本当にどこでどうやって皇帝と出会ったんだろう。
皇太后に仕える宮女の一人ではあるが、特に目立った存在でもないはずだ。
「ねえ、翠珠。ちょっと手を貸してもらえる? ここの細工が難しくて……」
「いいわよ。ちょっと待ってて」
翠珠に話しかけてきた春永は、翠珠と同じように、貴族ではない平民出身だ。実家はたしか、酒造だと聞いている。
春永の手にしていた衣を受け取る。裾のところに、金糸で作った飾り物をぐるりと縫い付けるのだが、飾りの扱いに苦労しているようだ。
「こことここに待ち針を打って……これでやりやすくなったと思う」
「ありがとう!」
ぱっと顔を輝かせた春永は、翠珠が待ち針を打った衣を受け取り、一心に縫いはじめる。
この部屋には、十数名が働いているが、いずれも美貌の持ち主だ。
皇帝の手がつくことを期待して、どの家も美貌の娘を送り込んでいるのだから当然と言えば当然なのだけれど。
(……私も、比較的容姿に恵まれている方だもんねぇ……)
最初のコメントを投稿しよう!