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はじまりの空
少年が膝を組んで空を見上げていた。
空には丸く白い風船のようなものが並んでいる。
間から薄く光が差していた。
手長蝦が頬をかすめて泳いでいく。
空から、輪のよう物がゆっくりと落ちて来る。
近づくほどにその輪が首飾りであることがわかる。
ガラスの珠が連なり、黒い革紐で繋いだ首飾りだ。
首飾は少年の手のひらにふわりと乗った。
じっとそれを見る。
青や紺や緑の小さなガラス玉が空からの光を蓄え、そして放つ。
少年はしばらく見入っていた。
首飾りが落ちてきた空を見上げると、光の差す隙間から、色の白い少女の顔が見えた。
ぼんやりとした表情の少年の瞳が、途端に大きく見開かれた。
あの子の顔だ。あの子の目だ。
忘れるわけもない。
少年は大きく伸びをすると、空へ向かって泳ぎ始めた。
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