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プロローグ
東山高校の一年四組は、呪われている。曰く、幽霊が出没する。曰く、呪いに触れる。何が起こるかは、語る人の数が存在している。とにかく寝静まった夜に学校へ訪れると、何かしらの怪異が降り注ぐという。
共通する部分は、以前訪れた女子生徒が行方不明となっており、その人が怪異を引き起こしているということだ。
先ほど文化祭があったとは思えないほどの静けさ。その中で、西条真樹と大森一真らクラスメイト達は怪談に興じていた。場所は体育館。光源は一本の蝋燭の炎が揺らめいているだけ。そこにクラスメイトが二十人くらい集まって、真樹を中心に円を描いていた。
「実際、行方不明者はいたらしいよ。十五年前に女子生徒が行方不明になっている」
一真の肯定に、前述の内容の話し手の真樹は頷いた。
「友達にも幽霊を見たことある子がいるんだよ。肝試しに一人教室に入ったら、横切る黒い影を見たんだって」
ざわつくクラスメイト達の声が、体育館にいるせいで反響する。語り部としては嬉しい反応だったので、内心にやにやが止まらない。
「それと福田先生知ってるよね? 温和なお爺さん先生! あの先生、この噂について何か知っているんだってさ!」
「知ってるって何を? 幽霊が出るようになった理由とか?」
「それは……私も分かんない! ニシシ」
「なんだよ~拍子抜けさせんなって!」
一気に砕ける雰囲気に、真樹は苦笑しつつ舌をぺろりと出した。一真もおいおい、という表情をする。仕方ないじゃん。私も先輩から聞いただけなんだから。
「もう少しで十二時になるし、そろそろ解散しよう」
バカ騒ぎをしている最中の、冷静な学級委員長の一言。水を差すような物言いだったが、時刻はすでに十一時半を回っていた。そろそろ先生たちに許可をとった時間を過ぎてしまう。体育館を借りる際に一真らが交渉をしたのだ、約束を守らないと次の行事の時に借りられないかもしれない。
結局その場は解散とする流れになり、一人、また一人と校門から出ていった。空は青白い満月が高く上っていて、生ぬるい風が吹き荒れている。秋を感じさせる枯葉が吹き上げられ、真樹のスカートがふわりと揺れた。
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