第三章――転機と暗躍

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第三章――転機と暗躍

 日曜日になった。駅付近で隆幸らは待ち合わせをした。十二月に入ったせいで、十時を回っても冷え込んでいる。おかげで暖房が利いた車はとても幸せな気分になった。  真樹は約束の時間の三十分前に到着していた。制服の上に上着を着、その上にマフラーを身につけているという重装備。  「さ、乗った乗った」  運転席には楓が乗り、助手席には寝不足だと言って大あくびする晴人。きっと夜までアポイントメントの作業をしていたのだろう。後ろは右が真樹、左が隆幸という順で搭乗した。  「西条さんは車酔いの薬持った? 楓の運転荒いから気をつけた方がいいよ~」  「ハル君、変なこと言うと走行中にたたき落とすよ」  「そしたらせっかく楓がプレゼントしてくれたライターも巻き添えだぜ?」  楽しく談笑している二人は、まるで危機感というものがない。これからのことを考えると、その方が気は楽だったが。頭の中は学生時代のままだからな、こいつら。俺もだけど。  「羨ましいです」  「そう?」  聞き返す。こんな関係のどこが良いのか。しかし真樹はさらに笑みを深めた。  「はい。……ずっと一緒にいられる。素晴らしいと思います」  真樹にも一緒にいたい人がいるのだろうか。不意に眼鏡の少年の顔を思い出す。  「一真君だっけ。その人のこと?」  「な……! なんでそれを知ってるんですか」  「いや。なんとなく」  「え~西条さん好きな子いるの? ならば猛アタックすれば男は簡単に落ちるから攻めることをお勧めするよ~」  すっかりフレンドリーに接する楓に、真樹の顔が赤くなっていく。わかりやすい。
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