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〈パパ、電気消そうよ〉
光が消えて、辺りが闇色に染まる。逃げようがないので、ふてくされ、やけになって、跳んでビンに体をぶつけてやった。長老が僕の後を追いかけながら、励ましてくれた。
「やめないか、毎日、遊んでいるだけで、きれいな水と、おいしい飯にありつけるだぞ」
「そんなうまい話がありますか?」
「あるんだよ」
〈パパ、ホタルが光ってる〉
人間の声が、少しやかましいときもある。
長老の言葉は正しかった。毎日、ブラブラしているだけで、苦労なく、水も食料ももらえる。
ありがたいのだが、外を飛ぶ自由がない。
数日が経った頃、またビンが揺れ出した。ビンの壁に張り付いて目を凝らした。懐かしい夜の草むらが、靡く風の音がする。遠くに人間の作った高い棒が立並び、地面を丸く照らしていた。
ポカ!
人間の腕の一部によってふたが開かれた。ビン内では、仲間の空気が一転する。
長老が叫ぶ!
「解放だな。逃げたいヤツは逃げろ」
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