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僕は必死に飛び立つ。ほかの仲間が、どうなかったか分からない。やっと草むらに戻れた。必死に木の枝にしがみついて、身を隠していた。僕に手に触れた葉っぱは、優しく擦ってくれているようだ。
深呼吸すれば、土や草の匂いがする。
急に草ごと巨大なモノに覆われた。僕は無我夢中で抜け口を探す。
〈ママ、アミでホタル捕まえたよ〉
アミなるモノの隙間を、前脚で掻け分け、頭だけをひょっこり出した。女の子が無邪気に僕を見ている。大きな黒い瞳には、水面のように、点滅する僕の姿が映っていた。
前回と同じく、快適な生活が送れた。僕は、少し太った気もする。運動不足も良くないので、気が向いたら、カゴの中をブンブン飛び回っていた。
僕らホタルからすれば、夜も、羨ましいほど、光に包まれた生活をしているのだ。人間の行動が、どうしても理解できない。
数日後、ムシカゴからトマト畑が、一望できる場所で解放された。僕とトシは、トマトの枝を避けながら、低空飛行してた。へとへとにになりながら、逃げ延びる。
カゴで仲良しになったトシが、赤いトマトにしがみつく。
まだ青いトマトの上で、丸く白い光がトシの輪郭を捉えた。僕は息を呑んだ。
「トシの居る場所、明るいぞ、人間に見つかるぞ!」
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