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義弟
あれから一週間、義母とはろくに口を聞いていない。というより、葵が話しかけても短い返事が返ってくるだけなので、会話が成立しないのだ。
憂鬱な気持ちで帰宅路を歩く。
(今日もあの祠に行こうかな……)
あの場所だけが現実逃避できる唯一の〝逃げ場〟だ。本島から外れた場所にあるからなのか、はたまた海に囲まれているからなのか、あの祠は周りから浮いているように感じる。
取り巻く世界から、徹底的に自分を遮断できる気がするのだ。
(着替えてから行こう)
遅い時間に制服でうろつくわけにも行かない。一度帰って、身軽になってからにしようと決めると、少しだけ帰路を急いだ。
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