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私と北斗が助け出した男たちを連れてホテルへ向かっていると、急に一人の男が苦しみ出して倒れてしまった。
「ちょっと!! 何? どうしたの?」
「うわああああ!! ボスだ!! やつらのボスが追って来たんだ!!」
「逃げろ!! 早く!! 殺される!!」
「ギャアアアアアアァァァァァァ!!」
一番後部を走っていた初老の男が悪党のボスが追って来たんだと叫んだ瞬間……その横で何かに攻撃されて倒れていた男が再び叫び声をあげて苦しみ出した。
「おい!! チェリー!! あれだ、透明人間ってやつだ!」
「マジで? どうすんの? 見えなくちゃ……戦えないじゃない!」
「こりゃ、一か八かだな!!」
北斗は険しい顔つきで周囲の時間を止めて私の腕を掴んでその場にしゃがみ込んだ。
「透明人間にオレの能力が効くのかわかんねえから、とりあえず耳だけはしっかり澄まして動けよ!」
「わかった。大丈夫そうなら、あの男の傷を治してさっさとホテルに戻るわよ!」
「ああ。そうだな……」
私と北斗は身を屈めたままで、周囲を警戒しながら怪我をしている男の方へ少しずつ近付いてみた。
倒れている男の身体のすぐ手前で見えない何かに私が足を引っ掛けて躓くと、北斗はさっと私を抱え上げて躓いた方向に身構えていた。
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「…………」
「…………」
「……動かねえみたいだな……。これって、マジで緊張するぜ」
「……緊張なんてもんじゃないでしょ?」
どうやら、透明人間に北斗の能力は効果があったようで私と北斗を攻撃してくる様子も無かったから、男の傷を回復させて3人の男の時間を戻すと、急いで私たちはその場を離れた。
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何とか北斗の能力のお陰で透明人間からは逃げ切れたようで、私たちはホテルに戻ってリーたちの姿を見た途端、張り詰めていた緊張が解けてその場に倒れ込んでいた。
「どうしたんです? この男たちは誰ですか? チェリー? 北斗? 何があったんです?」
「あーーー、ちょって!! もうちょい待って……」
《あたしが話しますよ! お嬢さんとお兄さんは、悪党の所からこの男たちを助け出しちゃったんですよ!!》
息を切らして倒れ込んでる私と北斗の頭の上でルディーが変わりにことの次第をリーに説明して苦笑していた。
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仰向けになって息を整えている私にユーチェンが水筒の水を持って来てくれたので、起き上がって水を一口飲んで大きく深呼吸をしてから横に転がっている北斗の胸に手をかざして疲労した北斗の体力を回復させた。
「無茶はしないで下さいってあれだけ言ったのに。北斗もチェリーも無茶苦茶ですよ!!」
「ごめんなさい。でも、どうしても放って置けなくて……」
「それに、敵のことも知らなきゃいけねえだろ? そんなに怒んなって!!」
呆れきった顔でリーが私と北斗に説教を始めると、北斗がいつものようにリーの肩に自分の腕を回して人懐っこくケラケラと笑ってその場を和ませようとしていた。
「それで? 悪党ってのはどうなんだ? どんなやつらなんだ?」
「ボスは透明人間だったわ!」
「あ、あの……ちょっと、良いですか?」
アランに悪党たちのことを聞かれて、私が答えている横で助け出した男の一人がおどおどした様子で口を挟んできた。
「ああ。そうね、あなたたちに話してもらったほうが助かるわ!」
「あ、あいつらの仲間の中に千里眼みたいな能力を持っているやつがいるんで……ここもすぐに見つかるはずです!」
「それは、不味いな。どうする? 移動するか? それとも迎え撃つか?」
奴らの仲間の中に千里眼の能力を持つ仲間がいると知らされて、アランがリーにこれからどうするのか答えを求めると、リーが大きな溜め息をついてから自分の考えを語り出した。
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「仕方がないので、しばらく地下へ行きましょう! 血を差し出せば吸血鬼たちはわりと友好的なようなので、利用させて頂きましょう!」
「マジ? 地下へ行くの!?」
「大丈夫だ! リーが言う通り、まだ吸血鬼のほうが友好的だ!」
「オレは、何だって良いぜ!!」
どうやら、リーは地下の住人とは友好関係を結んで来ていたようで、私たちはすぐに荷物をまとめて地下へ向かうことになった。
「そうだ! あなたたちの名前! 聞いて無かったわよね?」
「あ、ああ。私はイアンだ。このじいさんはチャンじいで、そいつがバン……バンはお嬢ちゃんと同じ日本人だ!」
「じゃ、これからよろしくね! 私はチェリーよ♪」
地下へ向かって歩きながら、私はイアンと言葉を交わして3人の不安を紛らわしていた。
私とイアンが肩を並べて歩いていると、目の前を歩いていたアランの真横に大きな瓦礫のコンクリートが降ってきた。
「何だ!? どっから降ってきたんだ?」
「気をつけて!! 敵かもしれません!」
「やだ、もう来ちゃったの?」
地下の入口がすぐ目の前に見えている所で私たちは、運悪く悪党たちに追い付かれてしまったようだった。
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私たちが立ち止まって周囲を警戒していると、また大きなコンクリートの塊が目の前に降ってきた。
「間違いない! 奴らだ!! 奴らの中にすごい怪力を能力に持ってる大男がいるんですよ!」
「面倒なのがいっぱいいるみたいね……」
「どうすんだ? 時間、止めてみるか?」
「そうですね。やるだけやって見ましょうか? 油断はしないでください!」
北斗がリーの承諾を得て時間を止めて、辺りの様子を緊張した面持ちで警戒していると、急にイアンが叫び声をあげてその場をのたうち回っていた。
「嘘っ!? 透明人間?」
「イアンから離れろ!! チェリー!」
膝を抱えて転げ回っているイアンに気を取られている私に向かって、北斗が叫んだ時にはもう……私は誰かに腕を掴まれてその場を動けなくなってしまっていた。
「大人しくしているなら、殺したりしねえよ! 特に女は貴重だからな!」
「嫌よ! 離しなさいよ!」
姿が見えない男に軽々と身体を抱え揚げられてしまった私は、必死に手足をバタバタさせて抵抗していた。
「待ちやがれ!! チェリーは絶対に渡さねえ!!」
「喧しい!! 邪魔しやがるなら、女の命は無いぜ!」
「……くっ!!汚ねえぞ!!」
透明人間に私を人質に取られてしまった北斗たちは、成す術が無くて悔しそうにこちらを睨み付けることしか出来ないでいた。
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