第5話【草原のド真っ暗で発見!】

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この名も知らない世界に転生してから一日が過ぎた。 夜は小さな岩の陰で寝て過ごした。 独りは寒くて寂しかったよ。 でも、めげてばかりもいられない。 明るくなると、直ぐにまた歩きだすことにした。 俺は考えた──。 少し悩んでしまう。 何かが、何かが間違っているような気がする。 俺が糞女神から貰ったチートなスキルは、ハクスラスキルのはずだ。 なのに俺は不意打ちで武器無しスケルトンを倒して得たものは、骨の棍棒(ボーンクラブ)とボロボロの服だけだ。 あと、1Gと経験値10もか──。 何故かショボイ! チートな冒険じゃなかったのか、この転生は!? なのに何故か次元の低いところを歩んでいるような気がしてならない。 ぜんぜん派手じゃない。地味だ。 何よりも今は水を求めて放浪中だ。 なんだか少し惨めである。 これが気のせいだと願う。 お腹もかなり()いてる。 転生してから、その辺に生えている草しか食べてない。 雑草を食べて飢えを凌いでいるのだ。 ほぼほぼ食えた代物じゃあないし、腹の足しにも成らない。 兎に角、ひもじい……。 やっぱり絶対チートな大冒険とは程遠い! 何故だ!? やはりあの糞女神を揶揄したのが悪かったのか? 天罰? いや、違う! あの糞女神の呪いか嫌がらせに決まっている!? きっとそうだ!! 兎に角、水を求めて俺は歩き続けた。 そして、俺は見付けてしまう。 このだだっ広い草原のド真ん中で、発見してしまったのだ。 本来ならば喜ぶべきことなのかも知れない。 俺が正しい冒険者ならば歓喜する瞬間なのかも知れない。 だが、今は嬉しくない。 見つけてしまった物に、素直に喜べなかった。 しかし、足はそこから動かない。 男の欲求なのか──。 冒険者の希望なのか──。 はたまた覇者への夢なのか──。 俺は見つけてしまった物の前から動けなく成っていた。 今は水を探すのが一番の優先事項である。 こんな物に構っている暇などないはずなのだ。 だが、やはり俺の足はそこから動けなかった。離れられないでいる。 見つけてしまった物を凝視する俺。 それは、岩陰に在った。 ポッカリと口を開いていた。 それが、何かって───? それは────。 それは、ダンジョンの入り口だったんだよ。 岩陰の穴に、(くだ)る階段が在ったんだよ。 覗き込んだら深いの何のって……。 もうこれは、洞穴とか洞窟って感じじゃあなかったね。 壁や天井も煉瓦作りだったから、完璧にダンジョンですわ。 本当に何でこんな草原のド真ん中にダンジョンが在るんですかと問いたい!? 誰でもいいから問い詰めたい!? 本当にタイミングが悪いよね。 今は水を探すのが一番大切なのに、なんでこのタイミングでダンジョンとかを発見しちゃうかな、俺。 とりあえず、入るか──。 もしかしたらダンジョンの中に水辺が有るやも知れない。 そうだよ、有るさ、水辺! こんな広いだけの草原を、宛もなく彷徨続けるより可能性は高いかもしれないじゃんか! やりー!! でも、行けるか、俺? 武器は骨の棍棒(ボーンクラブ)だけだぞ。 ちょっと強いモンスターとか出てきたら、()られるんじゃないか、簡単に……。 何せ、いまだにレベル1ですからね……。 武器無しスケルトンですら複数体出てきたら袋叩きに合うんじゃあないか? 自分の戦力を鑑みれば、やはりダンジョンに入るのは早いような気がする……。 でーもー、入りたーい。 すっごく入りたーい。 冒険がしたいよー。 んん、ここはやらない理由を探すより、やっぱりやる理由を探そうと思う。 ほら、地下に進むんだから、もしかしたら雨水が溜まってるかも知れないし! モンスターなんて巣くってないかも知れないし!! なんかスゲーお宝が在るかも知れないしね!!! やっぱり入って見なきゃあ、分からないよね!!!! シュレディンガーの猫は、箱を開けなきゃあ分からないもんね!!!!! よし、気合いが入ったぞ! きーめた! ダンジョンに入るぞ!! 初探検だぜ!! 【つづく】
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