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その刹那、僕は胸がきゅんとして只ならぬ誘惑を感じると、「この子たち、まるで恋人同士のようにじゃれ合ってますよ」と二匹の柴犬を見ながら青年がまたも先手を打って話しかけて来た。
このセリフを吐いたことからしても青年が相当な遣り手と僕は見たからそれより大胆に僕たちもそうありたいものですねえと直截的に答えてやりたかったのだが、僕は軽いノリで容易く話せる性格ではないし、青年がBLを望んでいると確信を持てなかったので、どうしても言えなくて只こう答えた。
「そうですねえ・・・」
その結果、僕らは暫く無言で愛犬の様子を眺める仕儀になった。と言うより青年が僕に言いたいことを喋らせようと態と無言でいるようにも思えた。だから僕は思い切ってちらっと青年の顔色を窺うと、何やら意味ありげに微笑していた。
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