謝りたい

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謝りたい

 公園のベンチに暗い顔で座っている女がいた。 「はあ、どうして私こうなんだろ……」  ため息を吐く彼女に、別の女が近づいていく。 「大丈夫?」 「あ、先輩……」  ベンチに座る女の顔に、少しだけ安堵のような表情が浮かんだ。 「また……失敗しちゃいました……」 「気にしないの」  彼女がこうして落ち込んでいる姿を、先輩は何度も見ていた。  さらに面倒な事に、彼女は気真面目過ぎるところがあった。だからいつも抱え込んでしまうのだ。 「謝りたいんですけど、彼が私の話を聞いてくれなくて」 「いつも言っているでしょう。そんな相手とは、さっさとお別れするのよ」 「でも、彼のことが憎いわけではないし、私が悪いのは分かってますから……」  謝りたいんです。そう言って泣きそうな顔をする女に、先輩は諭すように言った。 「良いのよ、気にしなくて。あなたはただ彼の前から消えればいいの。二人にとってもそれが一番の幸せよ。今までもそうだったでしょう?」 「そうですね……。みんな、私の話なんて聞いてくれなかった」 「謝る必要なんて無いのよ」  先輩は彼女の顔を覗き込むようにして優しく言った。 「次こそ、あなたの運命の人に会えるわ。だから先へ進まないと」 「運命……」 「この辺りにいるのは間違いないんでしょ?」 「はい」 「なら、探さなきゃ」 「はいっ!!」  女は頷き、勢いよくベンチから立ち上がった。その顔には笑顔が浮かんでいた。  先輩はそれを見て満足そうに微笑み、そのまま姿を消した。 「頑張らなくちゃ」  一人になった彼女は、空に浮かんだ月を見上げて決意を固めるのだった。
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