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更にその先のとても狭い隙間にガイドが入って行く。僕はガイドに続きその隙間に身体を屈めて通り抜けた。そして少し歩くと再び広い場所に出た。
その広場には石筍が何本も立っている。ガイドがその中の一つに『光』を当てた。僕は朱莉と二人でそこを覗いた。そこには・・。
「えっ? コウモリ・・?」
朱莉がそう呟いた。その『光』に照らされた透明な石筍の中にコウモリが取り込まれている。
「千年以上前のコウモリなんだって」
僕はガイドの話を朱莉に伝えた。
「へぇー、凄いね。千年も前から・・。ねぇ、ガイドの人『カルサイト』って言ってたわよね」
「ああ、これはカルサイトの石筍なんだって。日本語で方解石かな。炭酸カルシウムの結晶だよ」
「詳しいんだね。ねぇ、これ見て」
そう言うと彼女は首に掛けていたペンダントを取り出した。そのペンダントの蒼い石がキラリと『光』った。
「それは?」
「これは祖母の形見なの。『ブルーストーンカルサイト』。カルサイトって鍾乳洞にあるのね。知らなかった」
そのオーバル型のペンダントは僕のヘルメットのライトに照らされ蒼く『光』っている。
「それ綺麗だね・・」
僕がそう朱莉に言うと彼女が満面の笑みで頷いた。
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