地震、そして脱出

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地震、そして脱出

それは突然だった。大きな地響きが聴こえた瞬間、地面が揺れ始めた。それは直ぐに立っていられない程の激しい揺れになった。 「地震だ!」 僕がそう叫んで天井を見ると大量の鍾乳石が僕達の上から降って来ている。そして前方に居るツアー参加者の上に天井の岩盤が激しい音と共に崩れ落ちた。 次の瞬間、僕達の前に居たツアー参加者は落下した岩盤に埋れて見えなくなった。僕は何とかその落盤から逃れる事が出来ていた。そして右を振り向くと朱莉が足から血を流して倒れている。彼女の右足の横に血のついたツララ状の鍾乳石が転がっている。そして彼女の右足のズボンは真っ赤に染まっていた。僕は彼女に駆け寄った。 「朱莉さん、大丈夫?」 彼女は力無く首を振った。 「・・足が・・痛いの・・」 僕は急いで彼女の右足を見ると太腿(ふともも)に深い傷が見える。立ち上がってガイドの男性を探したが、彼も岩盤の下に生き埋めになっている様で声を上げても返答が無い。 仕方無く僕は自分で出来ることを考えた。僕はまず自分のリュックからタオルを取り出して彼女の太腿(ふともも)の付け根を縛った。これで流出する血液を少しは抑制出来る筈だ。 既に地震の揺れは治まっていたが、いつ余震が起こるか分からない。僕は洞窟の外に脱出すべきだと考えていた。
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