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「友美!」
すると誰かが火の海の中へと飛び込んでくる。
「……どうして」
赤いマフラーをヒラリと翻しながら、彼は私とばあちゃんの身体を抱き締めてくれる。
すると、何故か私達の周りを囲んでいた炎がゆっくりと消えていく。
「友美の友達だからね。助けに来たよ」
と、ふんわりと笑った彼の顔からはポタポタと汗が零れ落ちていた。
「今、みんなが集まって火を消そうとしてるから。もう少し辛抱して」
「……みんなが?」
「うん。やっぱり友情は永遠でしょ?」
と、微笑む顔を見上げすぐにハッとする。
彼の顔からポタポタと汗が零れ落ちる度に、その顔が徐々に溶けていく。
……どうなってるの?
朦朧とする意識の中で彼にそっと手を伸ばすと、その水滴は汗とは違いとても冷たかった。
「……あなたは」
問いかけようとした瞬間、彼が優しく遮る。
「このマフラー本当にありがとう」
__マフラー。
霞む目で赤いマフラーを見つめた瞬間、ある光景が脳裏に過る。
「……まさか」
「僕の姿が溶けてやがてなくなっても、僕達の友情は消えないよ?」
……そうか。彼はあの時の。
しかし口を開こうとした瞬間、ぼやけた視界に映る彼の笑顔が溶けて消えていく。
「……さよなら。友美」
「……待っ」
咄嗟に手を伸ばしたけれど、私の思考も同時に闇へと溶けていった。
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