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「ここにいたのは、たったの八歳までだったし。苗字も容姿も変わったからきっと気づかないと思います」
「でも……」
「お願いします」
と、再び頭を下げる。
そしてゆっくりと顔を上げると、先生は寂しそうな顔をしながらも小さく頷く。
そして建付けの悪い木造の扉に手をかけると、ガラガラと音をたてながらゆっくりと教室の扉を開けた。
「山田ちゃん。おはよー」
その瞬間、教室の中からは元気な声が響く。
あの頃とちっとも変わらない。
ふざけた口調で挨拶をするのは、このクラスで唯一の男の子。
__カズチだ。
「え!? もしかして転校生!?」
ガタリと音を立てて椅子から立ち上がったのは、サバサバとして男勝りな女の子。
__カヨチ。
「先生。聞いてないですよ」
落ちついた声でそう言ったのは、クラスの中のまとめ役。
__マミチ。
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