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知佐の家に行くことも叶わず、優衣はひとり、家の近くで母親が帰って来るのを震えながら待つしかなかった。
ようやく帰宅する母親の姿を見つけ、駆け寄って行ったが、男から連絡を受けていたらしい母親は、家に入ってから優衣の態度をひどく叱りつけた。
その様子を眺めながらニヤつく男の顔が、ずっと頭から離れなかった。
打ちのめされ、凍えた優衣の体を温めてくれるものは、もう何処にもいなかった。
翌日、優衣を待っていたのは、知佐たちの嘲笑だった。
「三日前さあ、変な石のそばでバカみたいに独りごと言ってたのよ優衣。なんかに憑りつかれたみたいだから、その石を壊してあげたの」
「昨日は、なんかあの丘からライラ~とか泣き叫ぶ声が聞こえたけど」
「石とお友達だったのかな。キモイんだけど」
「お医者さん紹介したら? 知佐」
もう何を思う気力もなく、優衣はその日ずっとうつむいて過ごした。
胸の痛みはライラと出会う前よりもひどかった。初めて得た光は一瞬の幻で、自分は自分でしかないのだ。友のお陰で変われると思ったのは都合の良い妄想だった。
優衣が以前の無力な優衣に戻ったのが伝わったのだろう。優衣へのイジメは再開され、さらに陰湿になった。
ひたすら耐え、学校が終わるとまるで亡霊のように校舎を出た。
これから向かう自宅にも、癒しなど無い。自分を包んでくれた光はもう、永遠に失われたのだ。
自分と出会ってしまったために消されてしまったライラにも、ただひたすら申し訳なかった。
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