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三 謎マフ女子の証言
駅に着いたのは、夜の七時半頃だった。
三人は改札を出て、目の前の喫茶店に入った。ここで改札を見張っていれば、謎マフ女子が既に帰ってしまっていない限り、捕まえられるだろうという魂胆だ。
「そう上手くいくかねぇ」
奥の喫煙席に一人座って煙草をふかす真中をよそに、改札の正面に陣取って身を乗り出し、右へ左へ目を凝らす佐伯。
さゆこは、出番までは何もする気がないらしく、イヤホンをしてスマホで動画視聴に励んでいる。
八時を回った頃だった。
佐伯はアッと声を上げて立ち上がった。
改札から出て来て出口へと急ぐ謎マフ女子を、見つけたのだ!
「え、何? いた?」
慌ててイヤホンを外すさゆこ。
「俺、ちょっと追っかけてくる!」
「ちょ、ちょっと、私も行くってば! 真中くん! これお願い!」
喫煙席の真中は吸いかけの煙草を消そうとしたが、まだ二本目の吸い始めだったので思いとどまり、いったん煙草を灰皿に置いて出てきた。
二人のコーヒーと佐伯のバッグを持って再び喫煙席に引き返すと、どうせ出遅れたからと、最後までのんびり煙草をくゆらせた。
謎マフ女子を追いかける佐伯は、いつもの出口へと向かっていた。やはりこの駅、そしてこの出口を利用していたのだ。彼女が出口を右に曲がったのが見えたので、まだ姿があるかと出口から右側を見てみた。
すると、思いがけないほど近くに、その姿はあった。
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