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「彼氏が浮気しててクリスマスに振られたとか……?」
さゆこが顔をしかめる。
「まあ、理由はなんだっていいさ。事実に基づくなら、彼氏は一度包みを開けていると考えるのが自然だろう。彼女はその後にマフラーを持ち帰った。その時に何かしらの揉め事があったことは、彼女の目が潤んで鼻が赤くなっていたことからも明白だ。彼女はマフラーを手に泣いていたに違いない」
「彼氏、最ッ低」
「ねぇ、もしかして、そのマフラーで首を絞めてきた、なんてことないかな……」
佐伯が恐る恐る指差すと、真中はニヤリと笑った。
「そして証拠隠滅のためにお前にマフラーを託した……、という可能性は充分にある」
「でも、マフラーが濡れていたのはどうして?」
「一度棄てようとして地面に置いたか……、あるいは、何か証拠になりそうな汚れに気づいて洗ったとも考えられる」
「ちょっと、やめてよ……、俺、ソレ首に巻かれた上に、一晩家に置いてたんだけど。お前凶器だとわかっててよく触れるな……」
真中は笑い声を上げた。
「まあ、それは冗談だ。殺人のセンは無い。そんなヤバいものなら、わざわざ人の多い駅前まで持って来たくないだろうからな。大方彼氏と喧嘩になって、プレゼントを奪い返して飛び出して来たんだろう。それで腹いせにマフラーは見ず知らずの男――つまりお前にあげてしまった。濡れていたのだって、手に持って歩いていれば、ウッカリ落としたり、電車内で人の傘に触れたりして濡れたとしても不自然じゃない」
「なぁ~んだ。結局大した話じゃなかったね」
さゆこは期待外れとばかりに肩をすくめた。
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