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俺と緋奈巳は、ここからまた進んでいくんだ。過去のことに、これから何度も泣かされる日が来るだろう。時々、思い出が溢れて、殻に閉じこもりたい日も、来ると思う。
それでも、帰る場所がある。
おかえり、と言ってくれる人がいて、ただいま、と俺が言う。そして、当たり前のように、キスをしてくれるだろう。
道に迷えば、間違えないように光を照らしてくれる家族がいる。友達が、いる。
叱咤して、正しい道へと導いてくれる人がいてくれる。
寂しい時は、そばにいてくれる。悲しい時は、みんなで集まって慰め合って、一緒に泣いてくれる。
萌梨。
明日なんて、当たり前に来るものではない。それを教えてくれたのは、君なんだ。ここにはいない君は、いろんな人の夢に現れている。結局ここにいないのに、しっかりと存在を刻み込んでいるんだ。
そう。萌梨は、ちゃんとここに存在してるんだ。
俺は、君を忘れない。決して、忘れない。
だから、今は緋奈巳に向かっていく気持ちを、どうか祝福してほしい。凛の夢の中で、なんの話をしてるのやら。
でもきっと、楽しい話題で盛り上がってるんだろう。
「あ、凜と千津だ。早かったな」
坂井さんの家があと少しのところで、凜と千津が手を繋いで歩いている姿が見えた。
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