第2章 温もりの上書き

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夜明け間近の街は、まだ車の通りも少なくて静かだ。日の出まで、まだ時間がある。 4月と言っても、朝方は少し肌寒く感じる。 俺は、ゆっくり目を覚まして、天井を見渡した。見たことのない天井の色。ライト。匂い。それに…。 隣で、少し冷えた素肌の肩を出して眠る女性。俺は左腕を真横に伸ばしていて、彼女の頭を乗せている。少し胸がドキッとした。顔に長い髪が少し掛かっていて、そっと人差し指で髪を掻き分ける。 彼女は、ひどく傷ついていた。 詳しい話しは聞いていない。それは、まだ、お互いに。そんなことを考えていると、彼女はゆっくりと目を覚まして、俺と目が合うと、一瞬固まっていた。 どう反応するのか、ちょっと待ってみるか。 そう思って何も言わずにいると、彼女は少し首を伸ばして俺の唇を塞いだ。
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