第1章 夢のつづき

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俺の名は、梶原祐。 昨日、38歳を迎えた。とは言っても、何も変わらない朝。今更歳を重ねていくことに、いやもクソもない。飲みすぎて、頭が重いってことくらいか? 俺はベッドの上で、ゆっくりと起き上がって目を擦った。 気がついたら、もう40歳手前。ついこないだまで、ハイハイして肩車していた娘の(りん)も、短大生となった。バイトもしている。奨学金のために。俺が払うって言ってるのに、自分で何とかするって言って聞かない。四年生の大学の進路も悩んでいたようだけど、短大にして早く社会人として就職したい、というのが本人の希望だった。 凜は、母親とよく似ている。 俺が唯一愛した人。 萌梨(もり)。 何年経っても、この想いだけは色褪せない。 他の誰かを、再び愛せる時が来るのだろうか。いや、そんな日なんか来なくていい。だって、他の人を愛することなんかきっと無理だから。 俺は、みんなの中で、一番過去に囚われているのかもしれない。
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