第2章 温もりの上書き

21/21
405人が本棚に入れています
本棚に追加
/233ページ
「え?住むところ、これから探すんですか?すぐ見つかるもの?」 「うーん。最悪ウィークリーマンションか、まぁ不動産に掛け合えばすぐになんとかなるかもしれないわね。そんな感じだから、凜ちゃん、心配してくれてありがと。ダメな大人でごめんね。仕事には差し支えないようするから」 「緋奈巳さん…!」 私は、緋奈巳さんの強がりが分かってしまった。あの緋奈巳さんが、散々泣いたんだね。きっと、物凄く辛かった。そんな言葉じゃ表せないくらいに…。 「凜?」 突然後ろから名前を呼ばれて、私は振り返った。そこには、お父さんが普段着の上にパーカーを着て、歩いて近づいてきた。いつもより遅いから、心配して迎えに来てくれたんだ。 「お前、こんな遅くまで…!」 と言ってお父さんが怒っているような口調になると、お父さんは私の隣にいる緋奈巳さんを見て、目を丸く見開いていった。 「君は……緋奈巳、さん?」 「祐さん?」 緋奈巳さんも驚いて、少し頬を赤く染めてお父さんを見つめていた。私は2人を交互に見て、 「え?知り合い?なんで?!」 と言うと、2人は今度は同時に私を見て、困惑したように苦笑した。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!