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2、クリスマスパーティーに行きたい。
もうすぐ、クリスマスだ。文芸部の仲間たちとクリスマスパーティーの約束をしてあるが、コートの事は皆、知ってるので、申し訳ないが今回はおごってもらう事になっていた。
でも、プレゼント交換の品だけは用意しようと思っている。皆は良いよ、無理しないで、と言っていたけど、さすがに手ぶらでパーティーに行く訳にはいかない。それだったら、行かない方が良い。母も、もう勝手にしたら、といった感じで、そこまで束縛はしなかったし、その後の事を考えたら、少しは甘やかしてくれているのだろう。
悩みはプレゼントだった。実はもう準備してある事はある。先月、ある有名作家先生の新刊発売サイン会で、サイン入りの本を手に入れていた。とても良い方で、クリスマスプレゼントにしたいんです、と言うと、「○○学園文芸部のあなたへ メリークリスマス」とそえてくれた。これは、一生物の宝物になる。
しかし…。
それは、文庫本だったのだ。
その先生は文庫書き下ろし専門なので、サインは文庫本にしてもらうしかなかった。
人気の作家の先生だし、文芸部内でも人気がある。皆で回し読みも出来るし、プレゼントとしてはかなり上出来な方だと自分でも納得していた。
あのコートに出会うまでは。
あの頃はまだ予算に余裕があったし、クリスマスまで日があったので、何か気に入った冬物の小物でもあれば、一緒にあげよう、そう思っていた。
【クリスマスプレゼント、文庫本、一冊】
それはいくらなんでもなしだろう、例えサイン入りだとしても。自分はブランド物のコートを着ているのに、と思うと、ますます、ありえない。
(パーティーは、行かない事にしようかな?)
自分でした約束が頭をよぎる。これを逃したら、しばらくは楽しみは何もなくなる。それを思うと最後の楽しみは友達としっかりと味わっておきたい。皆、楽しみにしている。やっぱり、行きたい。
悩んだ末、姉に相談する事にした。
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