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【警察本部・交通部交通捜査課】
「ウルフ、事故の映像、見つかった?」と、ちょっぴり小太りな先輩警察官が、ウルフ警察官の隣に座った。先輩警察官のお腹が目の前でたゆんと揺れ、ウルフ警察官は湧き上がる笑いを咳払いで誤魔化した。
「ゴホン、エフンッ。見つかりましたよ。大型トラックがベージュの軽自動車に追突して、大破。うわ、これはひどいですね。ブレーキ、踏んでいませんよ」
ウルフ警察官はパソコンに映し出されている、ややざらついた画質の映像から顔をあげて言った。捜査に私情を挟むのは禁物だと思うものの、つい唇を尖らせて不満をにじませてしまう。
パソコンに映し出されたドライブレコーダーには、大型のトラックが前の車に追突し、その後キュルキュルという独特の音をさせて走り去っていくところまで映っている。
当て逃げだ。しかし残念ながらナンバープレートは泥で汚れていて読み取れない。
「ん? 事故車はベージュじゃないだろ、黒の軽だろう?」
書類から顔を上げずにヒロ警察官は訂正して、砂糖がたっぷりとかかったあんドーナツを口に放りこんだ。
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