優しい朝がくる…?〜ハネムーン篇〜

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そう。 何故か昔から、運転すると周りの声とか聞こえなくなる。そしてスピードを上げて行くと、楽しくてしょうがない。もちろんスピード違反はしないけれど、ギリギリで走るようにはしている。免許取ったばかりの時は、そのへんの匙加減がわからなくて、事故りそうになった。なので、私の運転する車に乗ったことがある両親や友達は、二度と一緒に乗ってくれない。新婚旅行に出る前に、お父さんが圭太の腕を掴んで、 「長生きしたければ、芹那に運転させてはいけないよ」 と耳打ちしていたのを、ちゃんと聞こえていた。失礼な。父親のくせに、娘を信用してないのかしら。 目的地のカフェの駐車場に到着すると、私はエンジンを止めてシートベルトを外した。 「ふうっ。楽しかったわ!距離が短くて残念」 と私は言いながらドアを開けて外に出ると、助手席から青白い顔をした圭太が降りて、 「芹那。運転、楽しかった?」 と訊ねてくると、私は大きく頷いて圭太を見た。 「うん。すっごく。圭太、大丈夫?気持ち悪い?」 私の運転する車に乗った人は、みんな車から降りると、吐く。圭太もか…。今更、ちょっと後悔して圭太に駆け寄ると、圭太はまた吹き出して笑い出した。 「芹那、サイコーー!」 「え?」 「運転すると性格変わる人、結構いるよね。いや、性格出ちゃうっていうのかな?芹那、対向車とかに舌打ちしてたし。ほんと、面白すぎるよ!今度、絶叫マシン乗りに、富士急行こう!」 そう言いながら、圭太はお腹を抱えて大笑いしている。私は、そんな圭太を見てなんだかホッとした。 良かった。 具合、悪そうじゃない。元気だ。私の運転で吐き気もないなんて、さすが、私の旦那さまだわ。
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