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そこに、金髪の長い髪の女性とこげ茶色の髪の男性がカップルで店にやってきた。そのカップルが外国人なのは一目瞭然。ふと、圭太を見ると、圭太はそのカップルの女性の方を見て、少し固まっていた。
知ってる人?
その女性は圭太と目が合っても、特に反応はしていない様子だ。てことは、見知らぬ人だと思うけど…、圭太はその瞬間から少し元気がなくなっていた。
「圭太?どうしたの?」
私はテーブルの上に腕を伸ばして圭太の手に触れると、圭太は我に返って私を見つめた。
「あ、あぁ。ちょっと、昔のこと…思い出してて」
「昔のこと?私、知らないこと?聞かれたく、ない?」
「そんなことない。…聞いて、くれる?ハネムーンで言うことでもないかもしれないけど」
圭太はそう言いながら目を閉じた。私は頷いて圭太の手を握ると、圭太もそっと手を握り返してくれた。
「ロンドンで、結婚しようって約束した人がいたんだ」
睫毛を伏せて圭太が話し始めると、私は頷いた。
「少しだけ、お父さんから聞いたわ。亡くなってしまったって…」
「うん。その人。チャペルを予約したばかりだったんだ。で、夜、帰り道で酔っ払いに絡まれていた女の子がいて、彼女は助けようと間に入ったんだ。そしたら、彼女も一緒に絡まれて、向こうはふざけてただけなんだろうけど、通りの端の石段から転げ落ちて、頭を強く打って、即死だった」
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