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ふと、俺はグラスを置いて芹那を見つめて、
「芹那、前に大事な人とか、亡くした経験あったの?」
と何気なく訊ねてみた。俺の過去の話を聞いて的確なアドバイスをくれたから、何か経験があるのかと気になっていた。芹那は頭を横に振って、
「それは、ないわ。でも、職業柄、患者さんが突然亡くなってしまうことが、珍しくないのよ」
と少し儚げに応えると、俺は少し納得した。
「そっか。そうだよね。忘れてた…。病院って、そうの、避けられないもんね」
「しつこいくらいに口説いてきた人もいたのよ。でも、突然発作が起きて呆気なく亡くなった。そのときは、なんか自己嫌悪に陥ったかな。少しでも話しを聞いてあげてたら、楽しく過ごせてたかもしれないのに。可哀想って思って、自分を責めたりした。でもね、先輩に怒られたの」
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