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午前中の観光が終わって、私たちは駐車場に戻ると、圭太より先に私が運転席に回り、
「圭太。キー。…開けてくれる?」
と圭太に言うと、圭太は目を丸くして私を見て、諦めたようにため息をついて笑った。
「しょうがないな。じゃ、さっき見つけた
カフェまで、よろしくな」
圭太はそう言って私にキーを投げてくると、私はキーを受け取って車のドアのロックを外した。そうして私が運転席に、圭太が助手席に乗り込むと、私は鼻歌を歌いながらシートベルトをしてエンジンをかけた。
「じゃ、圭太」
「うん?」
「覚悟してね」
「え?」
「私、友達にも親にも、みんな、私に運転するなって言われてるの」
「え?!」
圭太の笑顔が、だんだん引きつってくる。
「私は、いつも通りよ。でもね。なんだか」
「…いや、あの。芹那。あ、安全運転で」
「みんなね、怖いっていうの…失礼じゃない?」
車は勢いよく走り出してパーキングを出て行くと、隣で圭太は窓の上の手すりを両手でしがみつくように掴んでいた。
「まじかーーーー!!」
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