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第1夜
困った………。
本当に困った………。
尾崎遥は住んでいたアパートの前で途方に暮れていた。
家賃を滞納し続けて……アパートに帰ったら鍵を交換されていた。
荷物は全部部屋の外に出されている…。
借金を作って蒸発してしまった父親の代わりにバイトを掛け持ちして死に物狂いで働いてきたが、働いても働いても借金の返済に追いつかず…。
通っていた高校を退学して頑張って働いてきたのに……住む所が無くなってこれからどうしたらいいのだろう。
遥は自分の少ない荷物を持つとふらふらと歩き出した。
このままどこか遠くへ逃げてしまえば借金はもう返さなくてもいいんだろうか。
ちらりとそんな考えが頭を過ぎる。
いや、借りたものはちゃんと返さないといけないよな。
元々の真面目な性格が借金を踏み倒すという考えを打ち消す。
しかし今晩泊まるところもなくてどうしたらいいのか。
12月のこの気温で野宿をしたら死ぬんじゃないだろうか。
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