真っ白な夜をたどれば (続編連載中です)

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 そこは落ち着いた和風の居酒屋さんで、おじさんたちが多かった気がする。  あたしたちはカウンターの隅に座って、 「理沙。何飲む」 「日本酒。辛いやつ」 笑って叔父は注文した。 「すいません。何か辛口で口当たり良さそうなのと、水割り。それと」  適当につまみも頼んでくれたけど、あたしはほとんど飲んで喋っていた。 「――――だからね、先月美咲のアレが親戚中に回ったでしょ?あれでもう、母がおかしくなっちゃって。早く結婚だ、孫だって。ほんとそればっかり」 「理沙まだ28だろ」 「『美咲ちゃんは23よ?子供が二十歳になってもまだ43なのよ。早い方がいいじゃない』って。あと、自分たちが孫の面倒看るにも、早い方がいいからって。……もう、いい迷惑」  美咲は、母の上の弟の長女で、学生の時から付き合ってた彼氏とこのたびデキ婚することになった。芸能人のニュースなんか見てる分には、だらしないとかケジメがないとか言っていた人たちが、身内のこととなると、それもいいわね、と言い出した。 「それまでは、さんざんディスってたくせに、……」 「……まあ、子供もだけど、理沙が心配なんだろ。一人娘だし」 「でも、今どき結婚しない選択の人だって多いじゃない?……結婚したって、必ずしも幸せになれる訳じゃ」  言いかけて、はっと気づいて言葉を切ると、叔父が頷いた。 「その通りだな」
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