ピンクのマフラー

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突然、大粒の雨が降り始めた。オレは(カバン)を傘代りにしながらシャッターが閉まってる雨除けの店に駆け込んだ。 「うわ、びしょ濡れだ。」 カバンに入っていたハンカチを取り出して、服を拭いてると、いつの間にか隣に若い女性がいた。 その女性は、オレと同じように服がびしょ濡れで、首にピンク色のマフラーを巻いていた。 女性は寒そうに体を擦っていたので、オレは女性に声をかけた。 「あの… 大丈夫ですか?」 女性はオレの声に反応して、動揺していた。 「もし、よかったらこのハンカチ使ってください。」 オレはさっき服を拭いていたハンカチを差し出した。 「あ、ありがとうございます。」 女性はハンカチを握ると、サッと拭くだけだった。 「きゅ、急な雨ですね〜」 オレはさすがに気まずいと思い、女性に話しかけた。 「そうですね。天気予報も言ってませんからね」 「今日はどこかに出かける予定だったんですか?」 「近くの図書館に行こうと思っただけなんですけど、急な雨が降ってしまって」 「そうですよね」 オレはさっき調べていたことを話題に出した。 「そういえば最近、マフラー事件って知ってます?」 「マフラー事件?」 「マフラーを犯行にしているんです。あと、被害者が女性なので気をつけてくださいね」 「詳しいんですね…」 「ただの記者ですよ、色々と調べてるだけですから」 「そして、被害者が女性なのは皆、可愛いマフラーを着けているから、」 「え…?」 「もし、私がそのマフラー事件の犯人だったらどうします?」 「またまた冗談を。そうなったときですか…」 オレはちょっとだけちゃんとに考えてみた。 「まずは取材ですね! できる限りのことを聞いて記事にまとめて…金儲けだ!」 「あはは…」 「すみません、金癖が強くて…」 「人それぞれですからね」 すると、目の前を見ると、光が差し込み雨が止んだ。 「雨止みましたね、ハンカチありがとうございました。」 「あ、どうも。」 オレは先程、彼女に貸していたハンカチを受け取った。 「それじゃあ」 そう言って彼女は来た道を戻っていった。 (アレ?図書館に行く予定じゃなかったのか?) 次の日、仕事場でパソコンを打ちながら作業していると、先輩があるニュースを持ってきた。 「おい!お前!確かマフラー事件の記事書いてた奴だよな?」 「そ、そうですけど…」 「これを見ろ」 先輩から、テレビのニュース番組に速報と書かれた事件が出されていた。 「犯人が逮捕された。」 「え?!犯人が?!」 「けど、遺体となって発見されたらしい。サツ(警察)は容疑者を掴めてたらしいな」 確かに、内容はマフラー事件のことだったが、オレはニュースのことよりも犯人に驚いていた。 「確か…この人って…」 犯人はオレが昨日会った女性と全く同じ顔をしていた人物だった。 しかも、内容によると遺体の体にはピンク色のマフラーが首にキツく巻かれていたそうだ。 「あれだけ女性を殺しといて、最後は自殺か、女性が女性を殺すとか怖い世の中だな」 「そ、そうですね」 オレはすぐに状況を読み込めず、席を立って別の部屋に向かった。 「おい、どうかしたか?」 「すみません、ちょっと気分が悪くて…」 「そ、そうか」 別の部屋に入ると、オレはただゆっくりと息をするだけだった。
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