一話 吉報

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一話 吉報

「結婚を前提に付き合ってください!」 フェール男爵の息子、コーナーが今日もテンプレートな言葉で迫ってきた。 「お断りします。私には心に決めた人が居るので」 私もいつも通りの返しで断った。 これでコーナーは3回目だ。いい加減にしてほしい。 苛立ちながら、私は屋敷へと足早に戻って行った。 屋敷に着くと、丁度来客と話していた父上が私に気付き、手を振った。 「おかえりポーラ、コーナーとやらが、 今日こそお前の自分の物にすると息巻いておったが、どうした?受けたのか?……まぁその様子を見るに、聞くまでも無さそうだが」 「あんな何も出来ないボンボンなんて、あの人に比べたらゴミみたいなものです」 父上はヤレヤレといった感じでため息を付き、 来客を見送った。 「ポーラ、私の部屋に来なさい」 何時もよりも真剣な分行きで父上が私を部屋に呼び出した。 「どうしましたの?」 「ポーラ、お前が想っているあの人は、確かに良い人だ。だが、お前ももう19だ。そろそろ結婚を考えなければならない歳になっているんだよ、お前がそんな対応をしてるから、お前は 女将軍なんて言われているんだぞ?」 まるで子供を諭す様に父上が言うので、私は腹が立ってきて、 「あの人以外の方と交際するぐらいならば、 戦場にでも出てやりますよ」 と少し反抗すると、父上は頭を抱えてしまった。 そんな時、ポストの方から、ガチャンと音がした。 「なんでしょう?私が取りに行ってきます」 私が部屋を退室した後も、父上は頭を抱えていた。 ポストには、一通の手紙が入っていた。 読んでみると、こんなことが書いてあった。 「拝啓、ポーラ様へ。 お元気でしょうか?私はクロードです。覚えているでしょうか?この度、ある事情で、戦場から戻って来られる事になったので、ご報告致しました。明日の昼頃に、貴方の屋敷へ向いますので待っていてください」 私は走った!嬉しい!あの人が戻って来るなんて! 「父上!これを読んでみてください!」 父上は手紙を受け取ると、ゆっくりと丁寧に読み出し、驚いて目が点になっていた。 「クロードが戦場から戻って来るだと!?どういう事があったのだろうか?」 「いいでは有りませぬか!クロードが戻ってくると言うだけで!」 歓喜の舞を踊る私を横目に、 父上は依然として、手紙を目前にして首を傾けていた。 「父上?何がそんなに疑問なのですか?」 「うむ、クロードは今でこそ軍陣であるが、 子供の頃はお前と同じ教養のある子だった筈、 それにしては字が乱雑だと思ってな」 私は、父上から手紙を受け取り、改めて読んでみると、確かにクロードにしては文字が乱雑に書かれている。嬉しさのあまり確認していなかった。 「それくらい良いでしょう!きっと突然の事で焦っていたんですよ。それに字の癖はちゃんとクロードですし」 「確かにそうなのだがなぁ……」 父上は腑に落ちないといった感じで、まだ首を傾けていた。 私は、気合を入れて準備をし、その夜は一睡も出来ずに、翌日の浅を迎えた。
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