4話 返事

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4話 返事

私の告白に、クロードは硬直し、動けなく無くなった。 そしてクロードは、手探りで杖を手に取ると、 「な、何を言うのです!?」 と言った。 この場の雰囲気をガラリと変えるほどの、 怒気をはらんだ声だった。 「私は、これで帰ります。お元気で」 そう吐き捨てるように言って、クロードは杖を駆使して足早に帰って行った。 私は、後悔で固まってしまっていた。 やはり言わないほうが良かったのだろうか…… 私は、弱気になっている内心をかき消す様に、 思いっきり頬を叩いた。 右の頬から、鈍い痛みが走った。 私は、クロードの後を追った。 ヒールを履いた足からは歩くたびにゴッゴッ!と音がなっていた。 父上が何か言っていた様だが、私の耳にはもはやそれすら聞こえてはいなかった。 クロードが玄関をまさに出ようとしていたその時、私は追いつき、クロードの手を掴んだ。 久し振りの全力疾走だったので、少しの間息切れで何も喋られなかった。 私は、絞り出す様に言った。 「何故、逃げるのですか!?」 「ポーラ様と私が、婚約などできる筈も無いでしょう!」 クロードは、怒りのこもった口調で叫んだ。 「何故ですか!?幼き頃、二人で誓いあったじゃあありませんか!」 「幼き頃とは、何もかもが違うのです!」 クロードは八つ当たりする様に、杖で地面を叩いた。 「幼き頃であれば、家柄など関係なく遊べたでしょう。ですが、貴方は、ニコラ家の令嬢。 そして私は、1武家の次男坊。身分が違うのです!」 「私はそんなもの気にしません!」 「ポーラ様が気にしなくとも、私が気にするのです!私と貴方が婚約するとなれば、周りからの避難は免れない!」 「そんな事は、私だって分かっています。でも! ここは引けないのです!」 クロードは押し黙った。こうなると私が動かないのは、クロードも知っている。 「……ポーラ様ならば、私より素敵な人などあちらから来るでしょう」 「貴方が戦場に行ってから、私は求婚をされ続けました。ですが、今まで会ったどの男も、貴方より素敵な人などいません!」 クロードの顔が、徐々に紅く染まっていっている。 「………私は、盲目の身です。貴方と歩いていく事など……」 「私が、貴方を支えます!二人で生きていきましょう!」 クロードは、不意に杖を落とし、そして、閉じられた目から大粒の涙を零した。 「それは、私が言う台詞でしょうに………」 クロードは、私の方へと向き直り、 「ポーラ様は、昔と変わらず私を振り回してくれますね」 と笑いながら言った。 「私も、自分の気持ちに素直になります。その上で、改めて、私から言わせてください」 クロードは、地面に片膝を付き、平伏するようにして言った。 「私は、盲目の身ではありますが、ポーラ様の事を、心から愛しております。願わくは、私と、婚約…………を前提としたお付き合いをしては頂けないでしょうか?」 私は、一つため息をついた。 「そこは、婚約では無くお付き合いなんですね」 少し、皮肉を込めて言った言葉に、クロードは頭をポリポリ掻いた。 そして私は、クロードの両手を取り、改めて言った。 「喜んでお受けいたします!」 私は、クロードを抱き寄せ、二人で大粒の涙を零した。
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