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 初代ローベルトが己の剣で国を切り(ひら)いてから、ノーウェン連合国は剣の国だ。  すべての武技の頂点に剣があり、国の中枢が内乱によって混沌としている時世にあっても、出世を望むなら剣を極めるのが近道、というのがノーウェン国民の常識だ。実際、家名を興した上流貴族のほとんどが剣の功績によるものだ。  剣のノーウェンの歴史に魔法使いが登場するのは、二代前の国王の時代と比較的新しい。隣国ラヴィーネでは弓と魔法技術の研鑽に注力してきたが、剣で戦うことを良しとするノーウェンにおいて魔法は(あや)しい力として忌避(きひ)されてきた。  そんなノーウェンで魔法がはじめて実戦利用されるのは、近代史で最も熾烈(しれつ)とされるポルダ高原防衛戦からだ。  ポルダ高原防衛戦では、押し寄せるラヴィーネの軍勢百を、寡兵(かへい)の魔法隊が阻み、ついにはこれを退けている。  ポルダ高原防衛戦の隊長は、当時まったくの無名だったサンクワール家の当主。  サンクワール家はこのときの功績で、魔法使いの家柄として初の、そしてある事柄でノーウェン唯一の上流貴族に名を連ねている。  そのサンクワール家が魔法の発展のために(おこ)した部隊がノーウェン魔法騎士隊だ。  魔法アカデミーは魔法騎士隊の下部組織にあたり、ここを卒業して初めて「魔法使い」を名乗れる。魔法アカデミーは今では魔法を学びたいものにとって憧れの的になっている。
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