始まりの逢瀬

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始まりの逢瀬

自然豊かな村の中で、立派な神々しく豪華絢爛な神社があった。人々はみな、その神社の崇拝者。10年に一度、神主が選ぶ巫女をどおか、私たちの娘をと、何も知らない村人は神主に乞うのだ。 記念すべき10年目の年を迎えた今、村の娘たちはこぞって、着飾ったり、神社へ足しげに通っていた。 しかし、女の子が生まれた村人のほぼ全員が申し出る中、藤崎家だけは違っていた。その神社の巫女になった娘のいく末を知っているからだ。 「美鈴、悪いけど、山に行って山菜とってきてくれない?」 「はーい」 藤崎美鈴、17歳。 村では美しく、活発で皆から愛されていた。そのためか、誰もが美鈴を巫女に何故しないの?と、不思議がるが、母親はいつも笑顔で、 「うちの娘が巫女なんて、想像できませんから」 と、謙遜するだけだ。 家としては、巫女になれた娘をもつだけで、将来を娘と引き換えに「安泰」を手に入れるというのに、変わった家族だと、奇異的な眼差しで見られることもある。
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