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どれだけ着飾っても、褒めてくれる人は彼がいい。彼がほめてくれるから、自分は美しくありたいと思うんだ。
「憂鬱だわ…」
美鈴が、庭の池を眺めて呟くと、後ろに気配を感じた。優しく包み込むような視線が、振り返らずとも、水面に映っているのをみて、少しだけ、美鈴の気持ちは晴れていった。
「どうされたんです?お嬢様」
「颯輝、どうもこうもないわ。明日お見合い相手がくるのよ。会いたくないの」
ふてくされる美鈴に、颯輝は優しく少し困った笑みをみせた。
「困ったお方だ」
「困ったのは私の方よ。ねえ、明日遠くへ連れて行ってよ。颯輝と行きたい場所があるの」
美鈴は瞳をキラキラさせながら、颯輝をみていった。
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