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彼女――水上希は僕に手を貸した後、すぐに用事があるようで足早に去っていった。
「今、何時くらいだろ……」
あたりは完全な闇となっている。山の上に存在する学校の屋上から一望できる街も、先ほどまでのような人工的な明かりはほとんど消え、まばらに蛍のようにぼんやりと色ずく程度になっている。
夜は好きだ。正確には、一年前から好きになった。病気になり、床に伏してから妄想が趣味になった。暗くなっていく性格に反して、妄想はやたらと明るいものが自然と多くなった。
あの漫画の続きはどうなるのかな、とか。気になっていたサッカーの試合はどちらが勝っただろうか、とか。些細なことではあるが、妄想しているときは心が落ち着く。
そういえば、こんな妄想もしたことがあったっけ? ――眠りから覚めたら、病気が治っていますように。
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