4杯目

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大学の新歓コンパ、 タダ飯ごちそうするという誘いが魅力的だったので参加した。 正直あまり乗り気わり得意ではない。 まあ、この年頃の人たちは恋愛脳だからしょうがないよな。 「友梨佳ちゃんも このサークル入ったんだね」 そう言って隣の席に座ったのは、 とにかくちっこいというイメージの派手な女だった。 「誰?」 「ええっ?私だよ花陽だよ。 幼稚園から一緒じゃない。 忘れるなんてひどーい」 化粧厚っ、 どんどけ塗りたくったんだ。 別人だろ? 「てか、何その顔?」 「えへへ、お化粧してもらったのー。 えっ、変かな? さっきここに来る途中で、薬局のおばちゃんに、メイクしてもらったんどけど」 「まさか、それ全部買ったんじゃないよね?」 「あ、なんで知ってんの? 何も持ってないから、 いいかなと思って買ったけど?」 「返品しな、 似合わない、何その色、必要以上な厚化粧。 絶対売れ残ったの押し付けられたでしょう?あんたカモられたんだよ田舎者丸出し」 「えっ、そうなの? ヤダ怖っ! 東京怖っ! 都会怖っ!」 何この子、 ばかを通り越して面白すぎ。 なぜか、幼稚園からずっと一緒だった花陽。 天真爛漫、天然女子。私とは正反対だ。 計算ではありえない失態を繰り広げ、 良く恥ずかしくもなく生きていると思う。 多分本能で危険だと認識して深く付き合うのを避けているのに、大学すら一緒になったようだ。 「でも、返品なんてできないよ、 優しくしてもらったし。おまけのサンプル沢山もらったし、いい人だったよ。」 「バカね、カモられてんだって、 使ってないなら返せるから。 せめてもう少し似合う色にするべき。 一緒に行ってあげるから返品するよ」 その日から、 私の隣のポジションを花陽が陣取るようになる。
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