4杯目

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あれから一年。 私は相変わらず、 家でイラストの仕事をしている。 少しだけ活動の範囲も広がり、 雑誌の仕事も貰えるようになって 忙しく暮らしている。 疲れた時は机の引き出しを開ける。 あの日撮った写真。 金屏風の前に並んだ、 二人の写真 ドレスの花陽と、 タキシードの私。 衣装を用意してくれていた係の人に、 ドレスでなく新郎が着るタキシードを頼んだ。初めは驚いていたけど、 新婦を驚かせたいからと言うと、 納得して準備してくれた。 花陽は驚いていたけど、 ひとしきり笑って、 「友梨佳らしいね」と言った。 多分私の障害を、 はっきり言わなかったけどなんとなく察しているのだろう、 「わがまま言ってごめん」ともいった。 仮設の金屏風の前で数枚の写真。 私が笑わないので、 ふざけてくすぐってきて、 むりやり笑わせられたっけ。 その時の一枚が、 私の宝物だ。 花陽も私も、 幸せそうに笑っている。 あの日私は彼女への恋心を 卒業できたのではないかと思う。   これはきっと私の卒業写真
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