おまけのおかわり

14/18
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
あー、恥ずかしかった。   あの場から逃れるためレストルームに 飛び込むと、 わけもなく水道をひねり水をながした。 蛇口から流れ出る水の冷たさが、 落ち着け落ち着けど心を冷やしてくれる。 できるなら顔を洗いたい気分だけど、 化粧落ちちゃうからやめておく。 ガチャっと入ってきたのは、 隣の席の女性。 「あ」 お互い同時に声をあげて、顔をそらした。 なんだか気まずい。 彼女は意を決したように声をかけてきた。 「私、私達、付き合ってないです」 「え? あ、さっきの聞こえてました? ……ごめんなさい」 「いえ、私達も聞いちゃってましたから。 お幸せそうでいいなって思いました。 おめでとうございます」 「え、あ、おめでたい…… そ、そうですね。 ありがとうございます」 「羨ましいです。 私、多分もう彼とは、あ、あの人幼馴染みなんですけど、付き合ってないですし、もうそんなに会うことないかもしれないです。私こっちの大学じゃなくて、就職試験で来てて、 今日、会社の最終面接だったんですけど、全く手ごたえなくてボロボロで、こっちには多分縁がなくなっちゃうだろうし、 だから、 地元で就職して、 親の決めた人と結婚とかしたりするんだと思います」 「そんなの、わかんないじゃないですか! そんなあきらめちゃだめですよ! 彼のこと好きなんでしょ?」 「彼はまだ学生だし」   「好きなんでしょう?」 「う、はい」 「うまく行かないことなんて、 いっぱいあるけど、 諦めないで頑張ったら、 きっといい事あると私は思ってて、 実は私、派遣社員で、いま仕事なくて、 でも、彼の仕事手伝ったら、 ご褒美にここのチケット貰って、 その上、あの人からプロポーズされて。 っ言っても、 まだ実感ないんですけどね」 「そうだったんですね。 はい。 そうですね、 諦めるのは早いですよね?」 「案外合格かもしれませんよ?」 「わ、そうですよね、ちょっと、そんな気がしてきちゃいました」
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!