予知夢

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予知夢

とあるところに、予知夢をよく最近見るようになった女性がいた。 例えば3年前のことである。 彼女が叔父夫婦の家に泊まっていた晩のこと。 彼女は夢で、この家が火事で燃え尽きてしまうという恐ろしい夢を見た。 翌日、その事を話すと皆は気味悪がり、今日は家を空けて何処かへ出かけようという事になった。 そして家を空けていた最中、夢は現実になった。 警察から、お宅の家が家事になりましたと電話があったのだ。 原因は酔っ払いによる放火。 こうして彼女の予知夢によって皆は救われたのだ。 そしてその事があってからというもの、彼女は立て続けに様々な予知夢を見る事になった。 そのほとんどの予知夢は自分や、親しい者の不幸を予言したものだった。 その為彼女は幾度となく、自分の予知夢に救われたり、はたまた他人を救った。 そららの事で彼女は予知夢をとても信頼するようになり、不幸を回避するためにはお金をいくらでもかけるようになった。 そんなある日の夜のこと。 翌日に控えた海外旅行に備え、彼女は早めにベッドで横になった。 そして見たのが予知夢だ。 その内容はこれまでで最大級の不幸であった。 明日乗る筈の飛行機が、飛行中に突然炎上し、どこかの街へと墜落してしまうというものだ。 翌日、起床した彼女はその恐ろしい内容の予知夢に青ざめ、慌てて旅行会社に延期の電話を入れた。 「ふぅ、これで危機は回避されたわ」 彼女はほっと、胸を撫で下ろした。 そして帰宅すると、もう一度ベッドに横になり、ゆっくりと瞳を閉じた。 「……予知夢に従っていれば私はどんな不幸も回避できる。本当になんて素晴らしい能力なのかしら」 彼女は瞳を閉じながらそう独り言をポツリと呟いた。 ……今頃飛行機はこの雲の上を飛んでいるかしら。 やがてどこかの部品が火を吹き出し、飛行機は墜落する。 だけど私だけは助かるのよ。 なぜならこの予知夢が教えてくれたから! 彼女は大きな不幸を回避したという安心からか、すぐに眠りに入る事ができた。 そしてそれが自分にとって永遠の眠りになるとも知らずに。 翌日のニュースはその飛行機事故に関する事で持ちきりだった。 遥か上空から街へと墜落したにも関わらず、飛行機に乗っていた乗客は皆無事だったということ。 それに加えて、街への被害もほんの最小限に済み、事故による住人の死亡者はたった一人だったということ。 まさに奇跡という言葉がふさわしい、そんな出来事だった。 それと同時に、事故に巻き込まれて死んだたった一人の被害者は、なんという不幸だったのだろうか。 関係者は皆目を瞑り、死んでしまった一人の女性に向かって、ゆっくりと黙祷を捧げるのだった。
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