おとうと

1/3
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「ねえ、あの窓の光りの中は、幸せなのかな?」 高層マンションに並列して出来た公園で 窓明かりを見ながら、きみが呟いた。 僕はきみの肩を引き寄せ頭を撫でながら 「幸せだと、いいね。」と、 少し小さな声で僕は応えた。 小さな声になった原因は、 幸せだよって言いきれる確信がなかったから。 「ねぇ幸平あそこ見て、あの上から3番目の1番左側、あそこの部屋、真っ暗よ。 誰も居ないのかな?それとも…、居るけど電気消してるのかな?」 「きっと寝てるんだよ。だから電気消してるんだ。」 僕は彼女の言葉を遮るように言った。 夕暮れ時、かなり暗くなってきた街は外灯や家の電気がつき始めていた。 「そうよね、きっと、そうね。仕事で疲れて……寝ちゃってるのよね。それで、あのさ、 幸平、さっきの質問の返事なんだけど、わたしはまだ結婚は、考えられないの。 幸平はまだ中学生だし、わたしは小学生。 それに、私たち、」 「解ってるよ、兄妹だって言いたいんだろ?! くそっ!!」 僕はまだ未開封のタバコの箱を地面に叩きつけた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!